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ワインとムジカとハリネズミ

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おっちんさんの思い出


もう10年ほど前になるけど
元町駅のすぐ南に小さい郵便局があって、そのすぐ隣のビルの2階に
ZUMAっていうバーがありました。

店主の名前はおっちんさん。
本名は・・・・・・忘れた。

自分たちより、ひと回り以上も年上だったような気がするけど
とにかく、ラグビー選手のような体つきでお腹が出てて、
常に酒が入ってるみたいにしょうもないギャグを言ってた。
無精髭を生やして、髪の毛は薄く、残った毛がもじゃもじゃで
もみ上げはチリチリ。笑い声デカイ。
全共闘でゲバ棒もってる人たちの様なヘルメットでカブに乗ってたような気がする。

店内はほとんど真っ暗で、映画ではヒッピーの部屋に必ず出てくる
クリスマスツリーの飾り付けのような、
あの赤いLEDがチッカチッカ光っていたのを覚えている。

現におっちんさんはヒッピーだ。
しかも放浪癖があるから、タチが悪い。

夜、仕事終わってからの顔なじみの仲間しか来ないような、そんなバーだけど、
とにかく、大らかで面倒見がよくて、
いわゆる「ボクらのヒーロー」的な存在だった。

そのZUMAって名前はニール・ヤングのアルバムタイトルだ。

その後、おっちんさんは昼間から営業をしているカフェを始めて、
テラスにオーブン用の窯を造った。そのテラスには屋号と同じティピーもある。
そして、しばらくしておっちんさんを見なくなってしまった。


そして、昔かなり入れ込んでいたカート・コバーンが猟銃でその頭を吹き飛ばす前に
聴いていたのか、遺書に書いていたのか・・・
「だんだん消えていくなら、いっきに燃え尽きた方がマシだ」という一節は
ニール・ヤングの曲からの抜粋だ。


しかし、自分がニール・ヤングに意識的な意味で触れたのは、実は2年前のこと。
いわゆるロックンロールを避けていたフシがあったのだが、
ライ・クーダーを探しに入った天満橋のHMVで
何気なく試聴した「ARCHIVES DISC3 ~ MASSEY HALL 1971」で
ガッツリ持ってかれてしまった。


ギターとブルースハープとピアノと唄だけの完全アコースティックライヴ。

カエターノ・ヴェローゾが、いろんな先達を賞賛した後
「これより素晴らしいのはジョアン・ジルベルトだ。そしてそれを凌駕するのは沈黙しかない」と
自身の歌の中で言ったが、
この「MASSEY HALL 1971」を前にしては同様に沈黙しかない。
あまりにかっこよすぎる!

最近、このARCHIVESのDISC1が8枚組のCDでリリースされた。
そしてニール・ヤングを聴き込むほどにおっちんさんの世界観が見えてきたような気がする。

おっちんさん、何してんだろ。
これ買ったかなぁ?




by necotee-ra | 2009-06-11 09:01 | ムジカ