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ホンダのF1撤退表明について

「ホンダF1から撤退」

今回の撤退表明は過去2回の「休止」表明とは違った「撤退」表明のニュアンスが濃厚な様で、再参戦は殆ど可能性ゼロとのこと。


F1そのものに殆ど興味の無い私にとっても本当に驚きでした


サブプライムローン問題に端を発する金融危機→信用危機→企業の経済危機から、
F1に必要な500億という莫大な負担を解消し、経済資源を再分配させるため、というのがその理由。
この理由の本質を考えると、ホンダの撤退表明はF1に参戦していない他の自動車メーカーにとっても他人事では済ませることの出来ない問題であると言えるでしょう。


この表明を聞いたトヨタの社員が絶句した、ということですが、
F1をめぐるエンジンの開発、空力開発、燃費向上を前提とした鋼材使用量の削減と同時に相反する安全性の向上など様々な技術開発において、ホンダとトヨタは凌ぎを削って来ました。
その競争相手、競合指標を失うことになったトヨタにとって、その喪失感は相当なもののはず。
なんといってもトヨタは絶大なブランド力と莫大な財力でもって日本でのF1GP開催地を鈴鹿からもぎ取ったばかりなのです。

これって、ワインで言うとピノノワールの世界ではロマネ=コンティなくしてカレラの存在は無かったし、ボルドーの名声がなければ、今の新世界ワインの隆盛はありえなかった、ということとイコールといえるのではないでしょうか。
(当然嗜好品の世界と経済に直結する産業界では与える打撃に雲泥の差がありますが)


また、この競争原理の減退はメーカー本体の間に限ったことではなく、関連企業や子会社、下請けにおいても大きな喪失感を与えるものです。
鋼材の代替として開発が進められていたカーボンの業界や雨天時や急ブレーキ、摩擦熱にも高い効果を発するタイヤを開発しようとしている方々、マシンを安全に迅速に運ぶための物流機器の業界、高いトルクにも耐えうるボルトナットの開発に携わる技術者などなど・・・


以前、私は物流機器の開発=製造=販売という業種に携わっていましたが、ホンダの子会社の方と一緒に仕事をする機会がしばしばありました。
彼が来阪した折にはよく2人で飯を食いにいったものです。
私が所属していた独立系の弱小企業と彼の所属する子会社とは言え大企業傘下の企業との間には大きな差があるのですが、
彼の設計力や商才は私にとっての指標であり、また競争相手でもありました。
F1の話ともなると目を輝かせ、いろんな裏話や苦労話を聞かせていただいたものです。
それほどまでに、F1というのは彼のモチベーションのひとつになっていたのでしょう。



今は全く違うところに身を置いていますが、どんな業界においても自分のところ一社だけでは事業を継続出来ないし、競合相手も含めて様々な企業とのつながりで成り立っていることを具体的に考えさせられてしまう出来事でした。
by necotee-ra | 2008-12-07 15:24 | ひとりごと