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ワインとムジカとハリネズミ

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せつな音


タンゴって助兵衛の音楽だと思う。


コントラバスの内臓まで揺れそうなあの低音。
あのバンドネオン強弱の付け方。
そしてフォナーレに向かっての盛り上がり方。

現にピアソラの晩年の作品のジャケットには
男が女の腋を踊りながらベッロ~ンと舐めている写真が使われているぐらいなんだから、
まぁ、偏見とは言え、あながち間違ってはないんでしょうね~


そう、ピアソラ。
古いタンゴの様式からいち早く決別し、
来るべき新しい時代のタンゴを模索した男。
50年代当時、その斬新さゆえ、周囲の無理解から」火星人」呼ばわりされていたらしいが
恐れることはない。なんてことない彼も相当な助兵衛だ。



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私にとってのピアソラのベストは
「INVIERNO PORTENO」と
「CONCIERTO PARA QUINTETO」の両方が入っている『LIVE IN TOKYO 1982』。
(関係者所有のブート臭するテープから起こされたとは言え、その出所と考えると極めて音質が良い)



でも今日はピアソラの話をしたいんじゃなくて、そのピアソラから後継者指名されて
実際にピアソラから最大の賛辞を送られたというディノ・サルーシの話。

最近、エアコンを利かせた夜中によく聴いています。
だから今日はタンゴの話。

ピアソラの後継者と言えばフランスにリシャール・ガリアーノがいますが、
マスコミが煽ってるだけじゃないんでしょうかね?
だいたい彼の場合はバンドネオンじゃない。



ディノ・サルーシはそのルーツをタンゴに発しているとは言っても
すでに俗物の範疇を越え、奏でる音はすでに仙人の域。
ピアソラの影響は当然受けているとは言え
(逆に受けていないバンドネオン奏者なんているのでしょうか?)
完全にピアソラの助兵衛加減と完全に決別した世界。
彼の場合、大地に根ざしたフォルクローレが大きなテーマになっているように思います。

一番よく聴くのは、完全ソロの「KULTRUM」(82年)
インプロヴィゼーションに混じって響く、震えるような郷愁感。
長い長いプロローグから紡ぐテーマが荘厳なラスト曲。
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そして、そのKULTRUM収録の[el Rio y el Abuelo]の再演が含まれた
「CITE DE LA MUSIQUE」(97年)
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内省的かつ温かみを帯びた楽曲は、ダブルベース(マーク・ジョンソン)、
アコースティック・ギター(サルーシの息子)という限られた構成によりさらに際立って響いてきます。
またバンドネオンの蛇腹の開け閉めの音まではっきりと聴き取ることが出来るほど、
とてもクリアな録音が成されているのも嬉しく、
レーベルECMならではの「らしさ」がよく出ている傑作。


ピアソラが情感激しい人間味のドロドロ感を描いて、印象として都会的な夜の音楽なのに対し
(そして何度もいうけど、とにかく助兵衛!)
フォルクローレの要素を源流にした自然賛美的な、
力強くも一種達観した後の爽やかささえ感じさせるのが、このディノ・サルーシ。 


むさ苦しい夏の夜、2時以降のお店のBGMにも結構は合いそうですよ!




こちらもECM専属?のアンデルス・ヨルミン(b)とのデュオ、'My one and only love'

by necotee-ra | 2009-07-29 23:31 | ムジカ